IT ソフトウェア開発 島崎法律事務所−京都−2014.2.17−トピックス
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トピックス    −目次−


ビットコインの払戻停止                                2014.2.17

 インターネット上の仮想通貨ビットコインの払戻停止が話題になっています。

 公式発表や報道を見る限り、技術的な問題が原因のようにも見受けられます。
 例えば  MtGox(マウントゴックス)からのお知らせ   
       ブルームバーグの報道     などです。

 純粋に技術的な問題であれば、遅かれ早かれ、払戻がなされるはずなので、さほど、心配することはないと考えられます。

 しかし、それ以外の要因も絡んでいるとなると、一刻も早く法的手続を取ることが必要になります。

 上記のMtGoxからのお知らせですが、2月7日の発表であり、2月10日には再度アナウンスするとの記載があるにも関わらず、その後の発表はなされていないようであり、技術的要因以外の要因があるのではないか、純粋に技術的な要因に基づくものだとしても、当面、解決の目処がたっていないのではないか、懸念されるところです。

■続報−2014.2.28−■

マウントゴックスは、民事再生申立とのことです(NHKニュース

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掲示板・ブログへの犯罪事実の書き込み                    2013.6.17

  2ちゃんねる等のネット上の掲示板や個人のブログで、実名を記載した特定人の犯罪行為について、面白おかしく取り上げられているのを、ときおり見かけます。

 一般に、特定人の犯罪行為を実名とともにウェブサイトに掲載する行為は、その特定人の名誉を毀損する行為であり、民法上の不法行為として、損害賠償請求の対象となり、情報の削除も請求されます。

 もちろん、事件直後の報道機関の報道は、内容が真実である限り、名誉毀損として損害賠償請求をされることはありませんが、これは、刑法230条の2の規定によるものです(条文は刑法ですが、民事上も、名誉毀損として違法か否かは、刑法と同様の解釈がなされています)。


 実名入りの犯罪記事が名誉毀損とならない場合

 刑法230条の2第1項は、名誉の保護と表現の自由の調和の観点から、

 @摘示された事実が公共の利害に関する事実で、
 A目的が専ら公益を図ることにあった場合は、
 
 その事実が真実であることが証明されれば、名誉毀損として処罰されないと規定しています。

 事件直後の報道機関の報道は、多くの場合、@Aをみたしているが故に、名誉毀損とはならないのです。

 では、先に述べた、掲示板やブログは、どうでしょう。上記@、Aの要件を順に検討してみます。

 @の要件(公共の利害)

 犯罪事実は、犯行が起きた直後は、社会の関心は強く、公共の利害に関する事実と言えるでしょう。刑法230条の2第2項が、公訴提起[前]の犯罪行為に関する事実は、上記@の公共の利害に関する事実とみなす、としているのも、このことを正面から肯定したものです。

 ただ、この規定は、裏を返せば、犯罪事実であっても、公訴提起[後]は、必ずしも、上記@にあたるとは言えないことを意味します。

 一般に、犯罪事実は、@事件発生、A被疑者逮捕、B公訴提起、C第一回公判、D論告求刑、E判決言い渡し、F判決確定、G執行猶予期間または刑期の満了、と段階を経るに従って、社会の関心は薄くなり、公共の利害に関する事実とは言えなくなって行きます。

 もちろん、重大犯罪であれば、刑期が満了した後も、公共の利害に関すると言える場合があるでしょうが、軽微な犯罪であれば、実名を含む犯罪事実が判決確定後も公共の利害に関する事実であると言えるような事態は、まず、考えることができません。

 Aの要件(公益目的)

 報道機関の報道は、国民の知る権利に奉仕するものであり、一般に公益目的があると言えるでしょう。

 しかし、個人が、2ちゃんねる等の掲示板や自分のブログに書き込む場合は、公益目的があるという事態は、極めて例外的な場合と解されます。
 
 実際、掲示板に、実名入りの犯罪事実が記載されると、それに続いて詳細な個人情報が書き込まれたり、犯罪を犯した特定の個人を揶揄したり、これでもかというほど笑い飛ばしたりする書き込みが次々となされて行きます。

 従って、そのような掲示板に実名入りの犯罪事実を書き込む行為の目的が「専ら公益を図る」ことにあるとは、到底、言えないでしょう。

 掲示板、ブログへの犯罪事実の書き込みは、名誉毀損

 ここまでの検討で明らかになったように、掲示板やブログに、犯人の実名とともに犯罪事実を記載する行為は、よほど特別な事情のない限り、名誉毀損に該当し、慰謝料請求をされたり、削除請求をされることになります。

 名誉毀損の慰謝料は、我が国では低額と言われていますが、近時、高額化の傾向にあります。


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不正駐車に対する高額の損害賠償請求                      2013.6.16

 コイン式の駐車場で、フラップ板を踏みつける等して駐車料金の支払いを免れるという不正駐車に対して、高額の損害賠償請求をされる事案が増えているようです。

 損害賠償請求する側は、たとえば「罰金10万円」とか「違約金5万円」と看板に記載しているのだから、それを承知で不正駐車した以上、その金額を払ってもらうのは当然だ、また、不正駐車した犯人を見つけるために相当な調査費用がかかっているのだから、その分も損害賠償してもらうのは当然だ、と主張してきます。


 実際、高額の請求をされて、「高すぎるんじゃないか」と思いながらも、自ら不正駐車したという落ち度があることから、やむなく、言われるままに高額の金銭を支払っている例も多いようです。

 しかし、法的には、そのような高額の金銭の支払をする義務は全くありません。仮に裁判になったとしても、判決で命じられるのは、正規の駐車料金プラス若干の調査費用程度の金額です。

 実際、私自身が代理人として交渉した事件ですが、1回の不正駐車で20数万円の損害賠償を請求されたという事件で、相手方も弁護士を立てて交渉し、結局、1万円を支払うということで示談が成立したことがあります。

 参考までに、下記に、これまでの裁判例を整理しました。

 この裁判例は、悪徳商法の被害者の方の救済などを目的とした弁護士間のメーリングリストを通じて各地の弁護士の方から提供を受けたものを、私の責任で整理したものです。

裁判所

事案の概要
裁判所の判断
@
東京地裁
平成17年4月28日  不正駐車1回につき罰金3万円という看板を設置していたことを根拠に、5回の無断駐車により15万円の損害を蒙ったとして損害賠償請求された事案

(但し、不正駐車が主たる紛争ではなく、実態は、隣地間の建築紛争)
 無断駐車によって看板記載の金額の損害が生じたとは言えないとして、請求棄却。
A岡山地裁 平成19年4月17日 @ 主位的請求:契約に基づく違約金15万円の請求

A 予備的請求:不法行為に基づく利用料相当額と分析・調査費用の請求
@ 請求棄却。

A 4万円弱を認容。
B岐阜地裁 平成21年10月21日 1回の不正駐車について、駐車場に設置されていた看板に記載された駐車場利用規則に基づき、違約金10万円を請求された事案  代金を精算する無人の設備でサービス等の提供を受ける場合、提供者と利用者の双方が契約を成立させる意思を有すると認められるときは、その契約が成立すると解されるとした上で、駐車場のフラップ板を踏みつけた状態で駐車し、料金を支払わないまま出庫していることからすると、利用者には駐車料金を支払う意思は全くなく、契約を締結する意思がなかったと認められるから、契約は成立していないとして、請求棄却。
C
京都簡裁
平成22年10月29日  不正駐車の違約金が10万円という記載のある看板が設置されている駐車場での10〜40回(双方で認識が異なる)の不正駐車につき、総額190万円を支払う旨の念書を差し入れ、110万円を支払った後、念書は無効として、110万の不当利得返還請求をした事案  念書に基づく合意は、50万円を超える限度で、社会的相当性を欠如し公序良俗に反し、効力が否定される、として、60万円についてのみ返還請求を認容。
整理すると、駐車場側の請求の根拠によって、以下のとおりになります。

1 契約(違約金を払うという内容の契約が成立している)を根拠とする請求
           ・・・・・・ 支払不要

2 不法行為を根拠とする請求
  看板記載の金額 ・・・ 支払不要
  正規料金 ・・・・・・・・・ 支払義務あり
  調査費用 ・・・・・・・・・ 相当因果関係の範囲でのみ支払義務あり

3 不正駐車発覚後の交渉により作成した示談書に基づく請求
   原則として、   ・・・ 支払義務あり
   例外的に、   ・・・ 示談書作成に至る経緯と金額により、
                一部については支払不要
                (事案によっては、全額について支払不要)

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「Asahi」ロゴマーク事件                               2013.2.12

 まず、次の二つのロゴマークを見ていただきましょう。

 

 左は、おなじみの「アサヒビール」のロゴマークで、知らない人はいないと言ってもいいでしょう。右は、とある食品会社のロゴマークです。

 もう20年ほど前のことですが、アサヒビールが、著作権侵害だとして、この食品会社を訴えました。

 裁判の結果は、どうだったでしょう。皆さんなら、どんな判決を下しますか。考えてみて下さい。

@ 「Asahi」のロゴマークは著作物であり、「Asax」は、「Asahi」の著作権を侵害するものである。

A 「Asahi」のロゴマークは著作物としての保護の対象となるが、「Asax」は、「hi」と「x」が異なり、「Asahi」の著作権を侵害したとは言えない。

B 「Asahi」のロゴマークからは美的創作性を感得することができず、このロゴマークを著作物と認めることはできない。よって、「Asax」が、著作権を侵害したものとは言えない。

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すぐに答えを見ないで、考えて下さいね。
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 何が「正解」かは別にして、我が国の裁判所が下した判断(東京高裁平成8年1月25日判決)は、B、つまり、「Asahi」のロゴマークについては著作権は認められない、というものでした。

 著作権が認められないということは、たとえば、朝日新聞が新聞の題字に「Asahi」のロゴマークを、そのままコピーして使っても、著作権侵害にはならないということです。

 こんな結論に誰が納得できるでしょうか。アサヒビールは、著名なデザイン事務所に莫大なデザイン料を払って「Asahi」のロゴマークを作成したのです。実際にデザインをしたデザイナーは、この判決を見て、どれほど悔しい思いをしたのでしょうか。どんなに斬新なデザインであっても、あまりにも有名になってしまうと、裁判官の目には、「美的創作性」が感じられなくなってしまうのでしょうか。

 我が国の裁判所が、このような判決を下す限り、いかに政府が知財立国を標榜したところで、ミッキーマウスもどきが闊歩する隣国と同様の知財後進国というレッテルを貼られても文句は言えないでしょう。

 さて、以前、お伝えした上坂祥元氏が原告となってNHKの大河ドラマの「龍馬伝」などの題字のレイアウトが、上坂氏の「匠象」「写影」のレイアウトの著作権を侵害したとして訴えていた事件(「龍馬伝」事件)ですが、一審請求棄却、控訴審で控訴棄却、ついで、最高裁で上告不受理の決定が出ました。

 判決の表現を引用すると、上坂氏の文字のレイアウトは、「ありふれたもの」であり、「個性が特にあらわれているということはできない」そうです。
 
 「Asahi」のデザイナーの悔しさ、上坂氏の憤り、これらは、創作の世界に生きる人々に共通のものでしょう。

 誰もこの世に生み出し得なかったものを、自らの渾身の力を振り絞って、この世に生み出したとしても、現実の世界に表れたとたんに、裁判所からは「ありふれている」「創作性がない」と一蹴される、こんな社会であっていいはずはありません。

 創作者のオリジナリティを正当に評価できる社会が遠からず到来することを信じてペンを置きます。


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未払残業代の一括払と源泉徴収                          2012.12.5

 未払残業代を一括で請求するケースがあります

 交渉や労働審判で未払残業代を支払ってもらうことになった場合、会社側は、源泉徴収義務を負うことになります。この場合、源泉徴収は、どのように行われるのでしょうか。
 
 先日、労働審判手続の中で、ほぼ未払残業代の額が確定したところで、会社側代理人から、200万円の未払残業代に対して50万円近い源泉徴収をすることになるとの連絡がありました。直感的に、あまりにも源泉徴収額が大きすぎると思って、顧問税理士さんに相談しました。

 税理士さんの説明では、それだけ高額の源泉徴収をするのは、200万円を、実際に支払われる月の給料に上乗せして計算しているからで、その方法は正しいやり方ではないとのことでした。

 過去3年にわたる未払残業代を一括払する場合には、それぞれの年度に対応する金額を各年度に割り振って、本来源泉徴収すべき金額と実際に源泉徴収していた金額との差額を今回の支払に際して源泉徴収する、というのが、正しい方法だということでした。

この問題については、国税庁のホームページに解説があります。

 なお、その後、相手方代理人から、正しい源泉徴収額は10万円程度になるとの連絡がありました。また、当然のことながら未払残業代を払わせるためには弁護士費用がかかっているので、所得額から弁護士費用が控除されないのか、税理士さんに尋ねてみたのですが、無理だとことでした。(2012.12.13)。

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メールの誤送信で解雇                            2012.9.5

 讀賣新聞の記者が、取材メモを他社の記者にメールで誤送信をした件で、諭旨免職になったそうです (JCASTニュース )。

 誤送信で諭旨免職というのは、ちょっと厳しすぎるような気がします。ただ、この記者が取材していたのは、暴力団捜査にあたっていた元警部が銃撃された事件と、その後に発覚した別の警察官による捜査情報の漏洩にかかわる汚職事件であり、誤送信による結果の重大性が考慮されたようです。
 

 新聞記者の秘密漏洩は刑法上処罰されるわけではありませんが、我々弁護士が職務上知り得た秘密を漏洩すると犯罪として処罰されます。

 ただ、処罰されるのは、「故意」の場合であり、メールの誤送信のような「過失」の場合は処罰されるわけではありませんが、故意であれ過失であれ、依頼者や関係者のプライバシーに対する重大な侵害であり、いくら注意してもし過ぎることはありません。

 ところで、報道によると、この記者は、一人に対して誤送信をしたというのではなく、地元福岡の報道機関13社に誤送信をしたとのことなので、おそらく、地元報道機関の記者で作っているメーリングリストに誤って投稿してしまったのだと思われます。

 実は、このメーリングリストへの誤送信というのは、恐ろしいことに、よくあることなのです。というのも、特定の個人にメールを送ろうと思って、その人が「送信者」となっているメールを利用するのはよくあることですが、そのメールに「返信」をすると、元のメールがメーリングリスト経由のメールだった場合、意図に反して、その人への送信ではなく、メーリングリストへの送信になってしまうからなのです。

 このようなメーリングリストの仕組みに無知なのか、知ってはいても注意が足りないのか、私が加入している弁護士仲間のメーリングリストでも、こういった誤送信がときおりみられるのです。それをみるたびに、気をつけなければとの思いを新たにする次第です。

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気づかない[公開設定]                            2012.8.25

 佐賀県武雄市の市長が作成した市民ら約200人分の個人情報が、インターネット上に流出していた ことが分かりました(毎日新聞 )。

 原因は、市長が、住所録のバックアップのためにインターネットのサービスを利用していたところ、バックアップしたデータが[公開設定]になっているのに気づかなかった、ということのようです。

 報道からは、市長が誤って[公開設定]にしたのか、あるいは、デフォルトで[公開設定]になっているのに気づかず[非公開]に設定を変更しなかったのか、いずれかは明らかではありません。

 インターネット上のサービスには、デフォルトで[公開設定]になっているものが少なくありません。以前、グーグルのカレンダーを使い始めたとき、書き込んだスケジュールが、公開される設定になっているのに気づいて、ひやりとしたことがあります。もちろん、すぐに[非公開]に設定し直したのですが、気づかずに、そのまま[公開設定]にしている人もいるのだろうと思っていました。

 果たして、その数か月後、家裁に行く予定を検索していたところ、横浜家裁の予定が出てきて驚きました。横浜[地]裁には行ったことはあったのですが、横浜[家]裁の事件は一度も担当したことがなかったからです。そこで、よくよく検索の仕組みを見てみると、公開設定になっている他人のスケジュールまで検索するようになっており、東京の法律事務所の予定が検索結果として表示されていたのです。

 早速、その法律事務所にメールで注意をしてあげて、すぐに対応されたのですが、つくづく、インターネットのサービスを使うときには気をつけなければいけないと実感したものです。

 [公開設定]ほどの害はないのですが、インターネットのサービスを使うときは、デフォルトの設定に気をつけないと、思わぬ不利益を蒙ることがあります。たとえば、そのサービスを使うと自動的にブラウザをグーグルクロームに変更してしまうとか、メールマガジンが頻繁に送られてくるようになるとか、勝手にショートカットをデスクトップに配置するとか、色々あります。

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大河ドラマ「龍馬伝」事件で、一審判決、著作権侵害を認めず     2012.3.28

 大河ドラマ「龍馬伝」事件で、一審京都地裁は、著作権侵害にはあたらないとの判断をしました。

 判決の概要については、 朝日新聞 等で、報道されています。

 判決は、商業書道における文字配置の重要性や原作者上坂祥元氏の作品の独創性に関する理解を全く欠いたものであり、改めて、控訴審の判断を求めることになりました。

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 グーグル検索予測機能、一部差し止め                     2012.3.26

 グーグルの検索予測機能の一部を差し止める旨の仮処分決定が東京地裁で出ました。  ある男性の名前で検索しようとすると、犯罪行為を連想させる単語が表示され、それを選択して検索すると、その男性を誹謗する 記事の一覧が出てきて、名誉、プライバシーを侵害されたというものです。   日経新聞等、各紙が報道しています。

 ただ、単純なプライバシー侵害とは様相を異にしています。というのは、プライバシー侵害は、私的な領域のものを公にする、というものですが、検索予測機能は、もともと、その男性の名前と、犯罪行為を連想させる単語とがセットで検索されることが多い、という事実に基づいて、男性の名前が入力されると、自動的に、その単語もセットで表示するというもので、いわば、元々、公になっていたものを更に、より多くに人の目に触れさせる、というものだからです。 

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「別府マンション事件」3度目の高裁判決                  2012.1.11

 「別府マンション事件」で、3度目の高裁判決が出ました。判決文は手元にありませんが、 讀賣新聞によると、極一部についてのみ施工業者らの責任を認めたにとどまるもので、購入者を広く保護すべきとした最高裁判決の趣旨に反して、またしても、業者保護に著しく傾斜した判決のようです。

 昨年7月の最高裁判決の半年も経たないうちに高裁判決が出たというのは、弁護士や裁判官から見れば異例の早さです。しかし、世間の常識からすれば、これまで、最高裁と高裁を行き来するたびに2年程度の年月がかかっていたというのが、異常な世界というべきでしょう。

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大河ドラマ「龍馬伝」の題字(レイアウト)による著作権侵害で、NHKを提訴  2011.9.22

 大河ドラマ「龍馬伝」「武蔵」の題字(レイアウト)による著作権侵害で、NHKを提訴しました。

 提訴の概要については、 朝日新聞共同通信 等で、報道されています。

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「讃岐うどん」の商標登録申請を却下−続報(京野菜の商標登録)   2011.8.1

 先日(2011.7.20)の「讃岐うどん」の商標登録で、京野菜などの登録について、京都府の担当者に尋ねてみると書きましたが、このほど、メールで回答が来ました。

 これによると、まず、日本国内では、「京野菜」ほか、いろいろな野菜について商標登録の出願をしたのですが、普通名称となっているという理由で、出願を拒絶されたそうです。

 また、中国については、検疫条件により野菜の輸出が実質上できない状況であることから、現時点で商標登録をする予定はないとのことでした。
 
 実際、 JETROの解説 によると、「現在のところ、日本から生鮮野菜は輸入されておらず、日本政府から中国政府にナガイモ等の輸入解禁を要請しているところ」だそうです。

 なお、京野菜については、以上のとおりですが、京都府産の農林水産物・加工品全体について、ロゴマークを作成し、そのマークを中国において商標登録をする準備をしているところだとのことでした。

 そういったロゴマークが中国で商標登録された場合、仮に、将来、中国国内で、「京野菜」「九条葱」などが、中国の業者によって商標登録されたとしても、このロゴマークを使えない以上、本物の京野菜のようなブランド力は持ち得ない、ということになります。
 なお、その後、 京都新聞8月8日付夕刊に、北山杉、宇治茶などの京都の伝統産品につき、京都の生産者団体が中国で商標登録を積極的に行っているという記事が出ていました。

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「別府マンション事件」最高裁、再度の差し戻し              2011.7.21

 いわゆる「別府マンション事件」について、本日、最高裁は、再度の破棄差し戻し判決を言い渡しました。

 この事件は、建物の瑕疵について、所有者が、直接の契約関係にない施工業者等に対し、損害賠償を求めた事案です。  ◆事件の概要は、こちら

 最高裁は、平成19年に、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」がある場合には、施工業者等は賠償責任を負うと判断して、高裁に差し戻しました。

 ところが、福岡高裁は、平成21年に、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、「建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合」をいうとして、損害賠償責任を否定しました。

 最高裁は、本日、再度の上告審で、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、「居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵」をいうとして、「建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合」に限らず、 「当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合」には、当該瑕疵は、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に該当すると解するのが相当であるとの判断を示しました。

 そして、具体的には、放置すると、外壁が剥落して通行人の上に落下するような場合や、ベランダ等の瑕疵により建物の利用者が転落するような場合には、上記の瑕疵にあたると判示したのです。

 なお、判決の全文は、最高裁のホームページにあります(最近では、重要な判例は、その日のうちに最高裁のホームページに掲載されるようになっています)。

 最高裁の判決は、一読しただけでは理解できないかと思いますので、図解してみました(私も、自分で図解することにより、ようやく、理解できました)。





 結局、H19判決で、もうちょっと踏み込んで、H23判決のように述べていれば、福岡高裁も、H21判決のような不法行為の成立範囲を限定する解釈をとることはできなかったのではないかと思います。
 
 そう考えると、H19〜H23の4年間は、一体なんだったんだろうという思いが拭えません。

 最高裁は、部下に仕事を命じるに際して、抽象的な指示しか出さないでおいて、いざ、部下が失敗すると、「俺の言ったのは、そういうことではない」と、部下を叱りつける無能な上司、と言ったところでしょうか。

 あるいは、上司の指示を都合よく曲解した部下に手を焼いて、(やれやれ、と思いつつも、そこは、ぐっとこらえて)咬んで含めるように、再度、指示を出す上司、と言った役回りかも知れません。

 一つだけ心配なのは、◆事件の概要 にも記載したように、H19判決は、今回、具体的に最高裁が解釈を示した「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」のみならず、不法行為の成立要件として、当然と言えば当然なのですが、「それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された」ことを、要件としている点です。

 H21判決を書いた福岡高裁の裁判官なら、「ベランダの瑕疵により利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険のあるとき」でも、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」の存在は認めつつも、まだ、人が転落していないのだから、「生命、身体又は財産が侵害された」とは言えないとして、結局は、不法行為責任を認めないのではないか、という点が危惧されます。

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「讃岐うどん」の商標登録申請を却下                   2011.7.20

 中国での「讃岐烏冬」(讃岐うどん)の商標登録申請に対し、香川県や、地元の業界団体が異議申し立てをしていた事件で、中国商標局が異議を認めたとの報道がありました。

 異議を認めた理由の一つに、「申立人により中国で先行使用され、出願人が飲食店の区分で登録すると誤認を生じさせやすい」ということが挙げられていました。

 そうすると、仮に、日本国内で著名なものであっても、現時点で中国に輸出されていないものについては、中国で商標登録されてしまうことになります。

 近年、中国の富裕層の間で日本の農産物に対する嗜好が拡大しており、農水省も、中国への農産物の輸出拡大に取り組んでいます。ところが、日本の農産物が広く中国に輸出されるようになる前に、中国国内で商標登録されてしまうと、輸出に際し、大きな障害となってきます(東電の原発事故の影響も、これに劣らず、大きな障害ですが、その点は、また、別稿で)。

 そこで、気になったので、地元の「九条葱」「聖護院大根」「堀川牛蒡」といった、いわゆる「京野菜」について、どうなっているか調べてみました。

すると、京都府のホームページに、次の記載がありました。

「京野菜」等の商標登録(「改正商標法」<18.4.1施行>に基づく地域団体商標)を支援し、他県産京野菜との違いの明確化を図ります。

 そこで、その後、どうなったかを調べてみると、特許庁のホームページに、京都の農産物の登録状況が出ていました。これによると、「京都米」「京の伝統野菜」というのは、登録されているのですが、「京野菜」や「九条葱」は、登録されていませんでした。

 日本国内でも登録されていないということは、おそらく中国でも登録をしていないのでしょう。この先、どうなるのか心配です。京都府の担当者に尋ねてみることにします。結果は、また、改めて、御報告致します。
 
  続報(京野菜の商標登録)2011.8.1

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ウイルス作成罪の新設                            2011.6.19

 2011年6月17日、コンピュータウイルス作成罪の新設を含む刑法改正案が成立しました。

 意外と思われるかも知れませんが、これまで、コンピュータウイルスを作成する行為そのものを処罰する規定はなかったのです。

 そうすると、これまで、コンピュータウイルスの作成者が処罰されることはなかったのか、というと、必ずしも、そうではありません。

 例えば、ウイルスに他人の著作物を組み込んでいた場合は、著作権法違反で処罰されており、他人の名誉を害する内容であれば、名誉毀損罪で処罰されていました。最近では、ウイルスが感染したパソコン内のファイルを壊したということで、器物損壊罪でウイルス作製者が逮捕されています。

 今回のウイルス作成罪の新設の結果、こういった事情(他人の著作物の利用、名誉毀損、ファイル破壊)がなくとも、ウイルスを作成したというだけで、処罰されることになりました。

 もちろん、ウイルスを作成する行為のすべてが処罰されるのではなく、「正当な理由なく」という限定が付されています。従って、アンチウイルスソフトの研究開発の過程でウイルスソフトを作成する行為については、処罰の対象外であることは言うまでもありません。

 なお、上述の器物損壊罪による逮捕の件ですが、7月に同罪で実刑とする判決が出て、被告人が控訴しているそうです(2011.9.2)。

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